放課後の夏の日、学校から帰宅した男の学生、ケンジは玄関をくぐった。家の周りには立派な柿の木があり、その葉が風に揺れて、さやさやと心地よい音を立てていた。ケンジは制服を脱ぎ、Tシャツと短パンに着替えると、自分の部屋へ向かった。部屋の中はまだ昼間の暑さが残っていて、熱気がこもっていた。彼は扇風機をつけ、その前に寝転がった。
扇風機の冷たい風が顔に当たり、少しだけ涼しさを感じることができた。ケンジはイヤホンを取り出し、お気に入りの音楽を再生した。その曲は夏の爽やかな日差しと青春の思い出を描いたもので、彼の心を穏やかにしてくれるものだった。窓の外を見ると、ぶどうのつるが風に揺れ、その影が壁に映っていた。彼は目を閉じ、音楽に耳を傾けながらリラックスした。
柿の木の葉音や遠くから聞こえる蝉の鳴き声が、自然のオーケストラのように響いていた。ケンジは一日の疲れを忘れ、ただその瞬間を楽しんだ。やがて、音楽のリズムと扇風機の風が彼を心地よい眠りへと誘った。まどろみの中で、彼は小学生の頃の夏休みを思い出した。
友達と遊んだ川遊びや、家族で行った花火大会、そして夜空に広がる満天の星々。すべてがまるで昨日のことのように鮮明に蘇ってきた。突然、外で大きな風が吹き、木々がざわめいた。ケンジは目を開け、窓の外を見た。夕方の風が強くなり、柿の木の枝が大きく揺れている。彼は窓際に立ち、その風景を眺めた。風の中で揺れる木々やぶどうのつるが、まるで踊っているように見えた。
ケンジは再び床に戻り、扇風機の前で横になった。彼の部屋は徐々に涼しくなり、音楽と風の音が心地よいハーモニーを奏でていた。彼は自分の将来について考え始めた。将来は何をしたいのか、どんな夢を追いかけるのか。そんなことを考えながら、彼の心は次第に軽くなっていった。その時、窓の外で小さな音がした。彼は窓を見てみると、彼の猫のタマが窓辺に座っていた。タマは柔らかい毛を風に揺らしながら、静かにケンジを見つめていた。